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タイトルマイナビ五番勝負第2局
記事No599
投稿日: 2017/04/20(Thu) 16:43
投稿者丹善人
加藤桃子女王の先勝で始まったマイナビ女子オープン五番勝負第2局は、
104手で後手の加藤桃子が勝ち、2連勝として防衛に王手をかけました。

先手上田初美、加藤桃子が飛車先を先に上げる居飛車で来ることを見越して
先手番ゴキゲン中飛車に。後手加藤桃子はやはり角道は後回しに飛車先を突き、
超速銀で迎えます。しかし先手は後手が4四の歩を上げて角筋を止めたので、
6筋の歩を上げて銀が出て来ることを阻止。さらに飛車を6筋に回して四間飛車に
作戦変更します。この後、先手は美濃に、後手は穴熊に囲います。

仕掛けは後手から。7筋の角頭に歩を突き捨て、8筋の歩も突き捨てて先手の
角をおびき出し、銀が前に進出。先手は取られそうな歩を伸ばしますが、角頭まで
出てきた銀がこの歩を消し去ります。先手は9五に回った角を生かすために
7二歩と打って、角成りの手を見せますが、この角成りは阻止できないと見て
逆に8七に飛車を成り込んで攻めを図ります。先手は6筋の歩を伸ばして
飛車も攻めに加わろうという構えですが、形勢は微妙なところ。

後手は4筋の歩を突いて攻撃開始。先手が角成りを決めると先手の金を
釣り上げて角が狙います。先手が金の守りに飛車を移動させると、後手は
ばっさりと飛車切りに。飛車金交換で取った金を打ち込んで攻めの継続。
先手は交換したばかりの飛車を打って守りますが、今度は逆の飛車金交換。
後手はすぐに飛車を打ち込んで攻めを継続させます。こうなると穴熊の深さが
生きてきます。

女流王座を連敗で失冠して、いっときは絶不調で、奨励会を1級まで降級した
加藤桃子でしたが、6連勝を含む成績で初段に復帰してからは手が見えるように
なったようです。絶対王者の里見香奈と好勝負を続け、マイナビ挑決戦でも
里見を下してタイトル戦出場となった上田初美ですが、調子を取り戻した
加藤の前では防戦一方でしかありません。

先手は飛車交換を避けて上に上がりますが、後手は先手の金を釣り上げてからの
銀をはずす桂馬打ち。金銀飛の3枚を守りからはずそうという狙いで、こうなると
先手玉の守りが銀1枚となり、金か飛車のいずれかの駒が手に入る後手は
攻め駒十分で圧勝する態勢となりました。

1枚も駒を奪わせないようにとする先手上田初美ですが、攻められる恐れのない
後手加藤桃子は穴熊を形作っている桂馬を飛ばして金取りに。ここはやむなく
金桂交換に応じ、先手玉ににらみを利かせる飛車の横利きを止める金打ち。
しかしこれは加藤の読み筋。いったん飛車を逃がしてからの攻めもありましたが、
強気の後手は、穴熊から上げた桂馬を跳躍させて先手の飛車に当てます。
ここはひしゃが逃げると寄り筋が生じてくるため先手は飛車交換しか手が
ありません。後手の持ち駒は2枚だけですが、先手も有効な守り駒が
少ないために流砂とも正確な読みが必要となってきます。

攻める後手は持ち駒は少なくても、落ちている駒を拾いながらの攻めで
攻めに途切れがありません。離れ駒を作らさせた段階ですでに加藤は
寄せを読み切っていたのかもしれません。
粘れるだけ粘りきろうとする後手上田初美は最善の受け連発で守り切ろうと
しますが、両者とも持ち時間たっぷりある中、加藤は最善の寄せを考えます。

最終盤攻める側も守る側もこれしかないという指し手。間違えることもなく、
あえて一手一手確認するかのように指していく中、心の整理をつけているの
でしょうか。これ以上守り切れないと見た先手は、思い出王手作りで首を
差し出します。しかし王手をかけても棋譜を汚すだけとふんだ上田は
結局は王手をかけないまま、自玉に詰めろがかかった段階で投了と
なりました。

【第10期マイナビ女子オープン五番勝負】

上田 初美 ●  ○ 加藤 桃子

+------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|   |  氏  名   | 第1局 | 第2局 | 第3局 | 第4局 | 第5局 |
+------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|女王 |加藤桃子奨励会初段|  先○ |  ○  |  先  |     |     |
+------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|挑戦者|上田 初美女流三段|  ●  |  先● |     |  先  |     |
+------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|   |         |119手|104手|   手|   手|   手|
+------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+

第1局 4月11日(火) 神奈川県秦野市「元湯 陣屋」
第2局 4月20日(木) 東京都港区「明治記念館」
第3局 5月16日(火) 愛知県蒲郡市「銀波荘」
第4局 5月24日(水) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」
第5局 6月 2日(金) 東京都渋谷区「東京・将棋会館」


÷  丹善人  ÷