谷口由紀が里見香奈に挑戦する大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負第1局は、123手で先手の
里見香奈が拾い物の逆転勝利で先勝。防衛に王手をかけました。
先手里見香奈、初手2六歩の居飛車宣言。対する後手谷口由紀は態度保留のまま駒組みを進め、
14手目で振り飛車一辺倒の谷口が初めて見せる居飛車に出ます。
お互いの歩を伸ばし、後手は角が3三に上がり、先手は銀が7七に上がりました。
先手は矢倉に組みそうですが、後手は居玉のまま進みます。
後手は居玉のまま銀を上げて7筋から8筋狙い。先手は金も上げて銀頭を守ります。
先手は手薄となっている2筋をついて桂馬も上げて一気に攻め込もうとします。
後手は角を下げて8六に照準を合わせて7筋の歩の交換にあわせて銀も攻めかかる
構え。
8六で歩を突き、銀交換となったところで空いた角頭に銀の打ち込み。玉で取った
ところで飛車が角の支えで突撃。当然玉が引きますが、後手は構わずに飛車角交換に出ます。
奪った角で5五に打ち王手飛車。駒得となった後手ですが、後手の玉頭も危うい状態。
桂馬の支えでの角取りの銀打ち。後手は後々のことを考えて先に桂馬を処分。銀角交換で
駒の損得はなくなった先手はすぐに角を打ち込んで香取りの角成りとします。
馬の働きの差を考えるとやや先手の方が使いやすくて有利か。しかし玉の守りが
先手は金1枚に対して、後手は金2枚と少し離れて銀もあり、簡単には攻め込めません。
先手は後手に適当な合駒がないのを見ての金先の歩の裏から香車を打ち付けます。
田楽刺しとなっているため逃げる事も出来ずに交換を許します。
後手は再び5五に馬を引いて玉のこびんを狙います。先手は金を支えに銀打ちで
封じますが、後手はむき出しの玉頭に歩の連打。金で取れるのですが、銀がタダに
なってしまうために、拠点となる歩を残したまま玉が下がります。
後手は馬を逃げずに金取りに桂馬を打ちます。先手も金を逃げずに馬取りを優先。
金馬交換となりました。
さらに後手は歩の成り込み。玉で取れますが飛車の打ち込みが厳しく玉は逃げる事に。
後手は飛車の打ち込みから正面からの桂打ちと先手玉を一気に追い詰めようとします。
後手谷口由紀が優勢に先手玉への挟撃態勢を築きますが、先手里見香奈も黙っては
いません。飛車の打ち込みから龍を作り、龍馬の大駒2枚での攻めを見せます。
持ち駒には角金とあり、チャンスが来ると先手からの攻めもばかにはなりません。
後手玉を脅かしながら、先手玉への脅威となっている桂馬を排除する事に成功しましたが、依然後手優勢。先手玉への詰みもありそうな状況。
後手はそれでも先手玉の正面を押さえながら、攻防に利いている先手の龍を排除
しようという手に。その間先手も持ち駒の角をも攻めに投入しますが、手番は後手に
あり、持ち駒を一杯使って寄せきろうとします。対する先手も持ち駒を有効に
使って守り切ろうとします。
感想戦では、ここで後手から先手玉への詰みがあったとの指摘があったそうですが、
後手はその筋が読めませんでした。
ここで事件が起きました。
確実な攻めと思われた持ち駒を増やす銀取りの手が実は緩手であり、一手の隙で
手番さえ回れば後手玉を寄せきれると読んでいた先手が、龍切りからの一気の寄せの
手で後手玉を追い詰めます。おそらく谷口由紀の顔は青ざめたに違いありません。
あっという間の頓死筋で、九分通り勝っていた勝負を落とすという結果に。
最後まであきらめない里見香奈の粘りが勝利運を呼び込んだ一戦でした。
【第26期大山名人杯倉敷藤花戦三番勝負】倉敷藤花:里見 香奈
里見 香奈 ○ ● 谷口 由紀
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| | 氏 名 | 第1局 | 第2局 | 第3局 |
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|倉敷藤花|里見 香奈女流五冠| 先○ | | |
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| 挑戦者 |谷口 由紀女流二段| ● | 先 | |
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| | |123手| 手| 手|
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第1局 11月 6日(火)東京都渋谷区「東京・将棋会館」
第2局 11月24日(土)岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」
第3局 11月25日(日)岡山県倉敷市「倉敷市芸文館」
÷ 丹善人 ÷