本来準決勝２局が同日に行われて、挑戦者決勝戦進出者がそろって決定する予定
でしたが、コロナウィルス対策の遠距離移動自粛のため延び延びになっていた
準決勝２局目がようやく行われることとなりました。
５回戦再挑戦の石本さくらと、予選全勝通過の伊藤沙恵で行われた、ヒューリック杯
淸麗戦準決勝は、１２０手で後手の伊藤沙恵が粘りの末の大逆点勝ち、女流棋士界の
受け師の異名を遺憾なく発揮して辛勝し、先に進出を決めている上田初美と
挑戦者決定戦を行うこととなりました。
先手石本さくら、石田流三間飛車の出だしに、後手伊藤沙恵は角道を開けた後、
１筋の歩を５段目まで伸ばして先手の美濃あるいは穴熊を事前に牽制します。
先手は美濃に、後手は角を３三に上げて銀冠か穴熊にしようというところ、
先手から角交換。後手は桂馬が跳ねた状態で銀冠になりました。
先手は飛車を４段目上げ桂馬を上げる典型的な石田流。後手は８筋の歩を伸ばして
こちらも飛車を４段目に上げて横利きをきかせます。先手は交換した角を４六に
打って戦闘態勢に入ります。
先手は角の利きを生かして７筋を突きますが、そこは許さないと、後手は角頭に
歩の伸ばして角を下げさせます。これが飛車当たりなので、後手は飛車で７四に
伸ばした歩を取り飛車をぶつけます。ならばと飛車交換に応じる先手。先手は
すぐに交換した飛車を打ち込みます。
桂取りはふせいだ後手ですが、先手は６筋の歩を突いて、銀で取ったところで、
６三に飛車成り。銀取りなので下げた銀当てに桂馬打ち。ここは飛車に当てながら
銀を守る金が上がって龍を追い払いますが、後手の受けはそれが精一杯。
先手は桂馬で銀を取りますが、後手はこの成桂を取らずにただただ龍を
追いかけ回します。
しかしうまい方法が見つからなかった後手伊藤沙恵は、とりあえず成桂取りに
桂馬を飛ばし、その間に先手石本さくらは龍を敵陣に潜り込ませます。先手の
優位が拡大したと言ってもよいでしょう。
後手は桂馬取りを防ぎながら先手玉のこびんを狙う角打ち。次に桂馬で王手は
可能ですが、続きの手がなく、先に玉に逃げられれば攻めようがありません。
先手はじっくり長考した後、角道を遮りながらの角金両取りの銀打ちとします。
これは金で取るしかない後手に、先手は角のタダ取り。実質角銀交換となりました。
さらに金取りが残っているので後手は金を前進。先手角に当てます。
優位に立っているとは言え、攻めるのに持ち駒の少ない先手は応手に悩みます。
このまま角を取らせて交換に金をもらうか。その場合、桂馬が跳ねて後手の手が
続きます。
じっくり考えた先手は、あえて角龍両当たりの桂馬打ちが見えている位置に
角を移動。桂馬打ちなら金取りに龍が動けて、守り陣を動かさずに持ち駒を
増やせます。後手もその手は見えているので、ただでは金は取らせないと、
あえて桂打ちは行わずに攻めを続行します。
後手の攻めに丁寧に応じる先手。余裕が出てきたところで金取りに龍を動かし
ます。これはさける後手ですが、先手が桂馬を取って角成りとした手がまたまた
金当たりに。持ち駒を増やした先手は、手番が来れば一気の寄せが見込まれます。
このままでは終われない後手は粘りの妙手、４五飛車打ち。攻め駒を増やすと
ともに、歩を切り捨てられれば守りに打つことも出来、攻防に利かせられます。
かまっていられない先手は後手の守りに使える駒がなくなったところで攻撃開始。
ぎりぎり逃げようとする後手。一手の隙に攻められればいいのですが、先手玉を
寄せるには駒１枚不足。詰めろを掛けて後手玉を追い詰める先手。攻めに不要な
駒でぎりぎり守り抜こうとする後手。時間がまだまだ残されているので、
間違わない寄せを読み切ろうとする先手です。
金または飛車の横に利く駒がない限り詰まない先手玉。相手に取らせないように
詰めろを掛けていきますが、後手も先手からの王手がかからないようにうまく
指していき、詰めろを消していきます。
ついに逆転に成功したか。今度は自玉が危うくなった先手ですが、後手玉を
引っ張り出しての玉頭戦。
受けきれば逃げ切った方の勝ちというわかりやすい局面。ついに後手伊藤沙恵が
大逆点で逃げ切り、勝ちを拾いました。あと一歩の所で大魚を逃した先手
石本さくらは、終盤詰め手順でミスがあったのかも知れません。勝てる将棋を
失ってしまいました。
【第２期ヒューリック杯清麗戦本戦トーナメント戦】清麗:里見 香奈
各組本戦トーナメン進出者
予選全勝通過：伊藤 沙恵女流三段
６回戦再挑戦：甲斐 智美女流五段
５回戦再挑戦：石本さくら女流初段
４回戦再挑戦：中村真梨花女流三段
３回戦再挑戦：岩根 忍 女流三段
２回戦再挑戦：上田 初美女流四段
１回戦再挑戦：中村 桃子女流初段
石本さくら ● ○ 伊藤 沙恵 １２０手
岩根 忍 女流三段---+
（３回戦再挑戦） +-岩根 -+
甲斐 智美女流五段---+ |
（６回戦再挑戦） +-上田 -+
中村真梨花女流三段---+ | |
（４回戦再挑戦） +-上田 -+ |
上田 初美女流四段---+ +-
（２回戦再挑戦） |
石本さくら女流初段---+ |
（５回戦再挑戦） +-石本 -+ |
中村 桃子女流初段---+ +-伊藤 -+
（１回戦再挑戦） |
伊藤 沙恵女流三段------------+
（予選全勝通過）
÷ 丹善人 ÷