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タイトル女流王位戦五番勝負第1局
記事No734
投稿日: 2019/04/25(Thu) 18:44
投稿者丹善人
渡部愛女流王位の初防衛戦である女流王位戦五番勝負第1局が行われ、131手で
先手の里見香奈が先勝。今期6戦目にして初白星を挙げた里見は、女流王位奪還と
クイーン女流王位に向けて好発進しました。

先手里見香奈ゴキゲン中飛車に、後手渡部愛居飛車の対抗形。先手は美濃に
後手は穴熊を見せながらも、先手からの端歩に合わせて1筋の歩を上げたので、
穴熊にするかどうかは不明。昨年度末から穴熊での戦いでは連敗しているので
用心しているのかも。先手は銀を中央に上げ、後手の3三の角頭を目標にします。

後手が金銀4枚でがっちりと守りを固めると、先手は目標を7筋に変更。飛車を
振ります。後手は7四の地点を守る為に飛車が上がりますが、これに先手は角を
9五とぶつけ、後手飛車が9四に避けると、さっと角を6八に引きました。
手番が回った後手は銀狙いに4筋の歩を突き出します。銀頭を守りに先手は再び
角が7七に戻ります。歩の交換で上がった銀を目当てに後手は銀を中央に繰り
出します。先手も飛車を5筋に戻します。

後手は再び飛車を8筋に戻します。もし先手が角を9五に上げれば千日手ですが、
さすがにそれはなくて、お互い9筋の歩を伸ばして角上がりをなくしました。
後手は先手銀の頭に歩を貼って銀を追い返します。先手は飛車を4筋に回して今度は
こちらからの攻め。落ち着いたところで、後手は玉を穴熊に入りました。先手も
銀冠に組み替えます。後手は角筋の歩を伸ばし、4段目が後手の駒で横一列
並びました。

先手は4すじの歩の交換から桂馬を飛ばし、この桂をささえに5三に歩を貼って
成り込みを見せます。と金が角当たりになるので、後手は角の逃げ道を作るのと
同時に先手玉のこびんを開ける手に。角逃げが王手になる仕組み。先手は銀上げで
玉のこびんをカバーしますがこれは後手の狙い筋か。

しかしここで先手角の筋を消してから攻めに入るのが正着と思われたところ、
角筋を止めずに先手角頭に歩を突いたことで、先手は角切りを決行。この手は
読めていなかったのか、はたまた想定内だったのか。
先手は歩成りで角当たりとしましたが、これに対して先手玉のこびんに角を
移動させるか、もう1マス上げて先手飛車に当てる手も考えられましたが、
渡部愛はなんと角をもう1マス先、8五まで移動させて、飛車先を開ける手に
出ました。

手番の回った先手は桂成りで穴熊への攻め駒を増やします。後手は銀を抑えに
歩を貼りますが、これがかえって先手の守り陣を固くする結果になったか。
その後角を玉のこびんに戻しますが、どうにもちぐはぐ感がします。
先手は銀の打ち込みで攻め駒を足します。対する後手は飛車が成り込みますが、
そこはきっちりと底歩で受けとめられます。

控え室でさまざまな手が検討されますが、どの検討にも出てこなかった2枚角が
指されます。攻め込む先手に後手は2枚の角を使って先手の攻め駒を消去。
攻めから一転守りに移ったことが結果的には弱気だったのか。先手玉は一転して
盤石になりました。

守りの薄い後手玉に、攻め駒が少ないとは言え、落ちている駒を拾いながら
攻めていける先手里見香奈は、自玉に危険性がなくなったので、ゆっくりと
角の打ち込みから攻めを開始していきます。
攻める手段がなくなった後手渡部愛は守り駒を足していくだけ。態勢はほぼ
決したと言っていいでしょう。

前期五番勝負第1局では勝利目前の里見が、手順前後のミスをしたために大逆点と
なったこともあるため、最後まで粘る渡部愛ですが、同じ撤は踏まないように
慎重に読み切って指し続ける里見香奈にもう油断はありません。


【第30期女流王位戦五番勝負】

里見 香奈 ○  ● 渡部 愛

+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|    |  氏  名   | 第1局 | 第2局 | 第3局 | 第4局 | 第5局 |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|女流王位|渡部 愛 女流王位|  ●  |  先  |     |  先  |     |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|挑戦者 |里見 香奈女流四冠| 先○ |     |  先  |     |     |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|    |         |131手|   手|   手|   手|   手|
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+

第1局 4月25日(木)兵庫県姫路市「夢乃井」」
第2局 5月 8日(水)北海道帯広市「とかちプラザ」
第3局 5月29日(水)福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」
第4局 6月13日(木)徳島県徳島市「JRホテルクレメント徳島」
第5局 6月25日(火)東京都渋谷区「東京・将棋会館」


÷  丹善人  ÷