挑戦者里見香奈女流四冠がタイトル奪回に向け先勝した女流王位戦5番勝負第2局が
行われ、91手で先手の渡部愛が故郷のみんなが応援する中、1勝を返し、対戦成績を
1勝1敗の五分に戻しました。
女流王位地元であり、過去に何百回も通ったという将棋連盟十勝支部がある帯広市の
「とかちプラザ」での凱旋対局であり、過去には女流王位戦タイトル戦北海道対局
解説会には最初は1観戦者として出席し、次には聞き手として登壇し、その次には
挑戦者として登場、そして今回は防衛戦タイトル保持者として出場という、まさに
シンデレラストーリーを歩んできた渡部愛にとっては、感慨深い物があったこと
でしょう。どじなエピソードが多く、忘れ物をしない限りは和服で臨みたいと出発前に
コメントがありましたが、無事に行けたようで和服での対局となっています。
昨年度の将棋大賞では里見香奈が文句なしの最優秀女流棋士賞を取り、女流棋界無敵の
里見からタイトルを奪ったことが評価されて渡部愛が優秀女流棋士賞を得ています。
また女流名局賞が女流王位戦から選ぶ流れになり、どの対局にするかで意見が分かれ、
最終的には女流王位タイトル戦全局が名局だったという判断でタイトル戦全体が賞に
選ばれています。
さらには、渡部愛と上田初美の女流名人戦リーグでの対局で、6度も駒柱が出現すると
いう、見る者に興奮を与えたとして「女流枠」ではなく、名局特別賞が贈られています。
大方の予想通り、先手渡部愛女流王位居飛車に、後手里見香奈女流四冠四間飛車という
対抗形で始まりました。互いの玉が7・8筋に移動し、先手が5筋の歩を上げて銀が
出ていこうという流れで、後手も5筋の歩を上げ、飛車を5筋に移動させてきました。
先手は5五での衝突を想定して銀を4六に上げます。後手の角筋は通っているので、
これは穴熊には組まないという意思表示でしょうか。
先手はいったん2筋の歩を突き捨ててから5筋をつっかけました。
後手は金を上げて2筋と4筋を守りますが、先手は飛車を5筋に回してここからの
攻め。守りに徹する後手の手もありましたが、あえて5筋の歩の交換を選択。先手が
銀を進出、さらに歩を貼って、角を9筋に回しての総攻撃の準備。後手は美濃を完成
させて守りを固めます。
先手は玉側の桂馬をはねて駒を足します。守りが薄くなるので怖いところですが、
先手は後には引けない勝負を賭けます。後手は角筋を通して銀がいなくなれば成り
込んで、手薄の後手陣をかき乱そうと狙いますが、かまわずに先手は桂馬を飛ばします。5三の地点での戦いは後手が歩を貼って誘う展開から開始。桂銀交換から先手は銀を
引いて、飛車角が5三を狙う形に。後手は6四歩と角道を遮ります。
後手は角を狙って9筋を突きます。これを堂々と受ける先手。駒交換で後手の香車が
まともに先手角の頭に。これを受けずに先手は9三歩。角を犠牲にして9筋から
後手玉を押さえ込もうというのか。後手は5筋で交換を迫られると玉の退路が塞がれる
ので、飛車の突入を阻止します。それをなおもこじ開けようという先手。
先手が中央にある後手の金を取りに銀を動かした瞬間に、後手は角の成り込みを決行。
先手は金が無くなったので、取られそうだった角を前進。すると後手は香車成りで
先手玉を脅かします。
お互いが我関せずで、先手は飛車当たりの銀成り。さすがここは飛車を逃がします。
目障りな馬当てに5五角と引きますが、後手は角筋を止めながらも先手玉のこびんを
狙う6六歩。これに応じると自玉が危ういと見た先手はまず玉を逃がします。すると
後手は今度は5八にある先手飛車の頭に歩を打ち付けます。放置すると歩の成り込みで
角がただになる仕組み。さりとて飛車で食っても歩成りが厳しい。ここはぎりぎり金で
歩を取りますが、4六歩と打って取らせて先手陣を乱します。
しかし先手玉は右にいくらでも逃げられるため、後手の攻めは続きません。やむなく
成香と馬を先手玉に近寄せる間に、先手は後手飛車の横利きを遮断しながら桂馬取りの
手に。攻撃のチャンスを待ちます。対する後手は挟撃態勢に出ますが、有効な持ち駒を
使い果たし、1枚駒が入るチャンスを待ちます。その間先手はとうとう桂馬を得ます。
後手里見香奈は王手成銀取りで逃げ道封鎖の成銀を取りますが、この銀は関係の無い駒。
先手渡部愛はたいぼうの桂馬で王手。そして逃げ道封鎖のために、桂馬を取ったと金で
香車を取りながら飛車に当てます。必死でこらえる後手ですが、後手の馬がいなく
なったために先手の飛車が後手玉頭の9筋に回れることに。馬の利きで止めますが、
この飛車は囮。本命の香車打ちでついに里見玉を捕まえ、渡部愛は故郷に勝利の錦を
飾りました。
【第30期女流王位戦五番勝負】
渡部 愛 ○ ● 里見 香奈
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| | 氏 名 | 第1局 | 第2局 | 第3局 | 第4局 | 第5局 |
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|女流王位|渡部 愛 女流王位| ● | 先○ | | 先 | |
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|挑戦者 |里見 香奈女流四冠| 先○ | ● | 先 | | |
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| | |131手| 91手| 手| 手| 手|
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第1局 4月25日(木)兵庫県姫路市「夢乃井」」
第2局 5月 8日(水)北海道帯広市「とかちプラザ」
第3局 5月29日(水)福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」
第4局 6月13日(木)徳島県徳島市「JRホテルクレメント徳島」
第5局 6月25日(火)東京都渋谷区「東京・将棋会館」
÷ 丹善人 ÷