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タイトル女流王位戦五番勝負第3局
記事No764
投稿日: 2019/05/29(Wed) 19:53
投稿者丹善人
両者1勝1敗のタイで迎えた女流王位戦五番勝負第3局が行われ、149手で先手の
里見香奈が勝ち、2勝1敗でタイトル奪還及びクィーン王位に王手をかけました。

先手里見香奈は三間飛車、後手居飛車党の渡部愛は飛車先をどんどん延ばして
いきます。先手は角が7七にあがり、後手が角道を開けたので、先手は角道を塞ぎ、
玉を美濃に囲います。対する後手は矢倉模様に玉を移動させ。端歩を突いて牽制。
勝率の良くない穴熊はやらないことに決めたようです。そしてコンピューターソフト
「elmo」が得意にしていて今流行しかけているという「エルモ囲い」に入りました。

両者駒組みを固めたところで戦闘開始。後手が8筋の歩を突き捨て、さらに5筋も歩の
交換で後手の銀が上がり、先手も金銀で5筋を守ると後手が5五に歩を打って先手の
銀を追い返します。
後手は6筋の歩を突いて出ていく構え。先手は飛車を中央に回しての攻めを見せます。

後手が7筋の角頭を狙って歩を突きだすと、先手は早々と角を5九に避難。ならば
6筋の銀を追い払って後手は金を8筋に繰り出しますが、先手は飛車を回して応戦。
先手の飛車が前後する間に後手は角を2二から5三へ移動させますが、これは
どうやら先手の誘いのよう。先手は動かされた銀を3筋の攻めに活用します。

ここで先手は誘いの2六歩突き。これを角で取れば角の確保が容易になるミエミエの
手ですが、後手はあえてこれに応じます。後手も先手の角を目標に攻めますが、
この攻防が本日のクライマックスになったかも。結果的に角交換が成立。先手優勢の
局面を後手が無理矢理にこじ開けていきます。

先手里見香奈は歩の連打で後手玉を攻めます。取ると後手の攻撃が厳しくなるので
あえて拠点を残す形で逃げます。対して後手渡部愛はいきなり先手玉の弱点の
玉頭を攻め、端歩を突いての攻撃。一瞬の油断が一気に詰みへとつながる終盤に
慎重な読みが求められます。

先手は角成りを決めたあと、後手守りの銀取りに。後手は飛車取りに香車を打ち
ますが、この交換が勝敗の分かれ目だったのか、先手は後手玉を危険地帯に釣り上げて
銀上がりで先手玉を脅かす桂馬の支えとなっていた歩を払います。この後、互いの玉が
逃げ出しての持将棋も考えられましたが、渡部愛は攻める手しか考えず、打ち込んだ
飛車が王手竜取りにかかる手をあらかじめ避けてからの飛車の打ち込みから寄せを
狙います。

しぶとく粘る先手玉に迫ろうという後手でしたが、里見香奈の受けは完璧で、隙を
与えない守りを見せて寄せきれず、渡部愛の無念の投了となりました。


【第30期女流王位戦五番勝負】

里見 香奈 ○  ● 渡部 愛

+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|    |  氏  名   | 第1局 | 第2局 | 第3局 | 第4局 | 第5局 |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|女流王位|渡部 愛 女流王位|  ●  | 先○ |  ●  |  先  |     |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|挑戦者 |里見 香奈女流四冠| 先○ |  ●  | 先○ |     |     |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|    |         |131手| 91手|149手|   手|   手|
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+

第1局 4月25日(木)兵庫県姫路市「夢乃井」」
第2局 5月 8日(水)北海道帯広市「とかちプラザ」
第3局 5月29日(水)福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」
第4局 6月13日(木)徳島県徳島市「JRホテルクレメント徳島」
第5局 6月25日(火)東京都渋谷区「東京・将棋会館」


÷  丹善人  ÷