女流王位奪還を目指す挑戦者里見香奈の２勝１敗で王手をかけた女流王位戦五番勝負
第４局が行われ、９６手で後手の里見香奈が勝ち、３勝１敗でタイトル奪還とともに、
クイーン王位を手にしました。

先手渡部愛居飛車に対し、後手里見香奈はゴキゲン中飛車の両者負けられない
得意戦法で始まり、先手は超速銀。後手も中央から銀を上げて角頭を守ります。
先手は金無双で２枚の銀が上部に上がり、後手は美濃に囲います。
双方態勢が整ったところで後手から５筋の歩の交換。先手が桂馬を跳ねて角に
当てたので、後手は角引き。続けて両者とも飛車を下段に落としました。

両者共に桂馬が手に入れば中央での打ち込みが怖いところ。そこで後手からの
桂馬交換要求。これは応じないわけにはいかないのですぐさま交換。ここで
後手から両銀取りの桂打ちが予想されるところ、これを受けずに先手は端歩を
突き越して後手玉の逃げ道封鎖を優先します。当然ながら後手は銀当たりの桂馬打ち。
おそらくは桂銀交換となりますが、桂馬２枚を手にする先手は考えようによっては
その方が有利かも。

先手は６六の銀が上がり、４六の銀との交換を要求。角が使いやすくなるためと
見られます。後手長考の後予定通りに進み、後手は５六に歩を垂らします。金を
上げて受ける先手。後手は角に紐が付いていないので、金を上げて紐にします。
昼食休憩中も里見香奈は盤から離れずに長考を続けます。

昼食休憩後戻ってきた先手渡部愛は角を上げていよいよ端攻撃開始宣言。後手は
角頭に銀を貼り角が端を睨んだまま４八に下がります。後手はここが勝負所と、
もう１枚の銀が前進。先手が銀を交わすと、５七歩成りと正面攻撃。これを角で
さばくと銀が突っ込み銀交換。角取りと角の成り込みの二つの筋が生じました。

先手は角を奪われるのはあきらめて角の成り込みを阻止。後手はならば遠慮無く
角取りから５筋での猛攻。先手は駒を足して防戦一方。
やはり両銀狙いの桂馬打ちを軽視したのがたたっかのか、後手が一方的に攻める
展開になりました。

後手は中央突破に駒を打ち続け、先手は駒を足して守る展開。後手の持ち駒に
角があるだけに守り駒の打ち場所が限定されるところ、ついに１五角と眠っている
角が飛び出しました。１筋の歩の突き合いを行っていなかったことがここで
影響しました。

守ってばかりはいられない先手渡部愛は桂馬を跳ねて攻めに以降。しかしこれを
待っていた後手里見香奈は一度出た角を戻して角成りの手に。跳ねた桂馬は戻せなく、
８九の桂馬を跳ねれば角桂交換で桂馬を使われて万事休す。読みが上回っていました。

まだあきらめない先手は後手の飛車を釣り上げ、数手先の飛車角両当たりの桂馬打ちを
狙って後手玉に襲いかかります。しかし桂馬を渡せない後手が逃げ切り、桂馬入手が
困難となった先手は飛車金当たりの銀打ちに変更。しかし元々金は交換用の駒。易々と
飛車に逃げられてしまいました。
このあと数手指した後、攻める手もなくなり、受けもうまくいかないと判断した先手が
投了。五番勝負は３勝１敗で挑戦者の奪取で閉幕しました。


【第３０期女流王位戦五番勝負】

渡部　愛　●　　○　里見　香奈

+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|　　　　|　　氏　　名　　　| 第１局 | 第２局 | 第３局 | 第４局 | 第５局 |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|女流王位|渡部　愛　女流王位| 　●　 |　先○　| 　●　 |　先●　| 　　　 |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|挑戦者　|里見　香奈女流四冠|　先○　| 　●　 |　先○　| 　○　 | 　　　 |
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+
|　　　　|　　　　　　　　　|１３１手|　９１手|１４９手|　９６手|　　　手|
+--------+------------------+--------+--------+--------+--------+--------+

３勝１敗で里見香奈のタイトル奪還、並びにクィーン王位獲得！

第１局　４月２５日（木）兵庫県姫路市「夢乃井」」
第２局　５月　８日（水）北海道帯広市「とかちプラザ」
第３局　５月２９日（水）福岡県飯塚市「旧伊藤伝右衛門邸」
第４局　６月１３日（木）徳島県徳島市「ＪＲホテルクレメント徳島」
第５局　６月２５日（火）東京都渋谷区「東京・将棋会館」


÷  丹善人  ÷