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タイトル女流王座戦本戦1回戦、中井広恵VS上田初美
記事No814
投稿日: 2019/07/10(Wed) 17:56
投稿者丹善人
リコー杯女流王座戦本戦1回戦、中井広恵VS上田初美の対局は、191手で先手の
中井広恵が粘りの大逆点で勝ち本戦に駒を進めました。

先手中井広恵、居飛車で美濃から銀冠に組むと、後手上田初美は得意の四間飛車
穴熊に組みます。先手は9筋・8筋の歩を上げていくと、後手は飛車を6筋に回し、
さらに先手玉が9八へと移行すると穴熊の囲いである桂馬を上げて6筋からの攻めに
参加させます。

そのまま角当てに8五に桂馬が飛び出ると、先手は角が下から右に移動。5三を
狙う位置に付けたので、後手は守りに飛車を上げます。先手はそのまま3三の角
狙いに。後手は6筋の攻めを継続。
先手は後手角頭に歩を伸ばしますが、後手は放置して6筋を突いて金当たりとします。
これは取られては総崩れとなるので、引きますが後手も角を引いて痛み分け。
しかし角道を通した先手は飛車を釣り上げて5三に角成り。後手は飛車を守りに
角が7三に回ります。

馬飛車交換なら、取った角がそのまま先手の飛車に当たるので、先手はいったん飛車の
位置を替えます。後手は飛車を追いやったことに満足して銀が進出、攻めの継続。
先手は心置きなく馬飛車交換から桂取りに歩を打ちます。後手は桂取り放置で5五から
歩を貼って攻めます。先手が桂馬を取り飛車打ちで角を下がらせますが、後手は角の
打ち込みで銀を使った攻めを見せます。

先手は、後手の銀からの攻めは怖くないと見たのか、あるいは受けようがないと
判断したのか、8筋の歩を突きますが、持ち駒が桂馬1枚しかないのが気がかりな
ところ。継続手が難しいと判断した後手はここで攻撃に入ります。
銀交換で馬を作り、王手なので先手に交換した銀を使わせて引き上げ。先手は飛車馬
交換に出ますが、後手は邪魔な8筋の歩を消去して交換に備えます。

後手は交換しても仕方が無いと飛車が成り込みしますが、これはすでにあきらめた
手なのか。後手からは飛車取りの手があり、さらにはカナ駒を奪い取る手もあります。
上田初美は飛車取りは回りくどいと、銀打ちでカナ駒を奪い取って先手の守り陣を
崩す手を選びました。

金銀交換で持ち駒を得た後手は、守りに歩を1枚使い、先手からの攻めが来ないように
警戒します。取られそうだった飛車が相手にされなかったので、先手は飛車の壁と
なっている銀を動かして横利きを通して守りに参加させます。後手は金取りに歩を成り
ますが、先手は逃げながら馬取りに当てます。しかし後手の狙いは再び飛車の横利きを
止めることに。馬取りに出られても金が手に入るわけでまだまだ攻め駒が残されて
いるから、先手の守り駒が減る分優勢は動かないと見ているようです。

攻めることしか道が無くなった先手も穴熊崩しに壁を崩そうとしますが、いかんせん
穴熊は深く、容易には迫れません。後手はもう1枚銀を奪って戦力の補充。先手は
持ち駒総動員で後手玉にプレッシャーをかけます。しかし後手は奪った銀で穴埋め
しながら攻めの催促。やむなく銀桂交換で後手に桂馬を渡すことに。

即詰みの手を見つけ出せない後手は、先手の攻めを受け潰す方針に変更。相手の隙を
なんとか見つけて逆転に望みをつなごうとする先手ですが、持ち時間に余裕のある
後手はじっくりと受けて手番を待ちます。手番が来れば後手から飛車龍両当たりの
角打ちもあるので、先手は角を貼って筋を消しながら攻めの継続を図ります。

後手は持ち駒のカナ駒をすべて使って受けきろうとします。駒交換からカナ駒を得た
先手は最後のチャンスとばかりに秒読みに追われながらも攻めを続けます。
攻防の末外堀を埋めることに成功した先手。籠城しているだけでは勝てないと判断した
後手は自玉に即詰みは無いと見て、攻めの角の打ち込み。再三にわたる先手の攻めに
ギリギリ受けきってとうとう後手に手番が回ってきました。

後手の猛攻にじっと耐える先手。両者とも持ち時間は使い果たしての勝負は攻防の
要でもあった角を奪い取った後手に針が振れました。しかしこれからがまだまだ
長い。粘る先手は玉の頭を押さえる金を払い去り、桂馬を貼りまくり、容易には
攻めきれないようにします。こちらも秒読みに追われる後手は奪った駒を守りに
投入。攻守逆転で先手が詰めろまで粘ります。

飛車の横利きを遮断する後手に、詰めろを阻止する角を取り去ろうという角打ちの
先手。一瞬の油断が勝敗を分ける体力勝負となりました。
妙手と思える攻防の手に後手は攻めの角を守り専用に引くしか無く、振り子の針は
先手に振り直されたかのようにも見えましたが、ギリギリの受けに先手の攻めが
続かず、再び手番を与えることに。

後手はばらばらな守り駒を捨て駒を打つことで固くしなおしてから、攻撃のやり直し。
しかし先手玉を裸にするのが精一杯。攻め駒が乏しく寄りが無くなりました。
対する先手は龍がまだ生きた状態。再度攻めの体勢を立て直して大逆点を狙います。
何度も攻守が逆転する熱戦は、最後粘りに粘り抜いた先手中井広恵が、後手玉を
押し切り、粘りの勝利となりました。後手上田初美としては、終盤勝ちがあったかも
しれない局面で読み切れずに惜しくも体力負けしました。


【第9期リコー杯女流王座戦本戦】女流王座:里見 香奈女流四冠

中井 広恵 ○  ● 上田 初美   191手

伊藤 沙恵女流三段-------+
             +-   -+
室田 伊緒女流二段-------+     |
                  +-   -+
香川 愛生女流三段-------+     |    |
             +-渡部 -+    |
渡部 愛 女流三段-------+         |
                      +-   -+
山口恵梨子女流二段-------+         |    |
             +-   -+     |    |
山田 久美女流四段-------+     |     |    |
                  +-   -+    |
谷口 由紀女流二段-------+     |         |
             +-   -+         |
岩根 忍 女流三段-------+              |
                            +-
加藤 桃子女流三段-------+              |
             +-   -+         |
鈴木 環那女流二段-------+     |         |
                  +-   -+    |
上田 初美女流四段-------+     |    |    |
             +-中井 -+    |    |
中井 広恵女流六段-------+         |    |
                      +-   -+
水町 みゆ女流1級-------+         |
             +-藤井 -+     |
藤井 奈々女流1級-------+     |     |
                  +-   -+
西山 朋佳 女 王-------+     |
             +-西山 -+
清水 市代女流六段-------+


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