前章の最後で述べた、後手が最善手で先手の左美濃型▲3八飛戦法に対抗した
場合の変化を解説します
「図1」
後手の持駒:なし
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・v飛v銀 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・v角v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩 ・v歩v歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ ・|六
| ・ 玉 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 角 銀 ・ 金 ・ 飛 ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:なし
手数=30 ▽6三金 まで
「図1」は前章「図3」の▲3八飛に対して、後手が▽6三金と上がった局面です
「図1」から「図2」までの手順
▲3五歩 ▽同 歩 ▲4六銀 ▽4五歩 ▲3三角成 ▽同 銀
▲3五銀 ▽4六歩 ▲同 歩 ▽2七角 ▲3七飛 ▽5四角成
「図2」
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・v飛 ・ ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・v銀v歩v歩|三
|v歩v歩v歩v歩v馬 ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ 銀 歩 ・|五
| 歩 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・|六
| ・ 玉 ・ 歩 ・ ・ 飛 ・ 歩|七
| ・ ・ 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 歩二
手数=42 ▽5四角成 まで
▽6三金で、▽7一玉形の横が薄くなったので、▲3五歩 ▽同歩に▲4六銀と速攻する
手も考えられますが、左美濃型からでも後手が▽3二銀型の場合、やはりこの攻めは重く
「図2」まで先手が不利となります。手順中▲3三角成の所で、単に▲3五銀と出るのは、
▽8五歩と突かれて困る事になります。
「図1」から「図3」までの手順
▲3五歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽4三銀 ▲3四歩 ▽2二角
▲2四歩 ▽同 歩 ▲9五歩 ▽3二飛 ▲9四歩 ▽3四銀
▲2三歩 ▽3一角 ▲3九飛 ▽9二歩 ▲4四角
「図2」
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・v角v桂v香|一
|v歩 ・v銀 ・ ・ ・v飛 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・ 歩v歩|三
| 歩v歩v歩v歩 ・ 角v銀v歩 ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ 歩 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・|六
| ・ 玉 ・ 歩 銀 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ ・ 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ 飛 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩
手数=47 ▲4四角 まで
▲3五歩 ▽同歩に▲同飛と、単に取るのが、この場合でも正着となります。これに対し
▽4三銀と角頭を守るのは、▲3四歩と押さえてから、藤井システムのもう1つ薄い場所、
9筋を絡めての、▲3五飛を縦横に活用した攻めで、以下「図3」まで先手が優勢と
なります。この形では逆に端の9筋を攻められる場合も有るので、注意が必要なのです。
「図1」から「図4」までの手順
▲3五歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽8三銀 ▲3四歩 ▽2二角
▲3六飛 ▽8二飛 ▲4六銀 ▽8五歩 ▲同 歩 ▽8四歩
▲3五銀 ▽8五歩 ▲4四銀 ▽8六歩 ▲同 玉 ▽7二銀
▲9七玉 ▽8八飛成 ▲同 玉 ▽4四角
「図4」
後手の持駒:角 銀 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香 ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v銀 ・ ・ ・v銀 ・ ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・v歩v歩|三
|v歩 ・v歩v歩 ・v角 歩 ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ 歩 ・ 飛 ・ ・|六
| ・ ・ ・ 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩|七
| ・ 玉 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:飛 歩三
手数=52 ▽4四角 まで
「図1」からの▲3五歩 ▽同歩 ▲同飛に対しては、これも左翼は動かず▽8三銀と
上がるのが正解なのです。▽6三金に続き、普通に美濃囲いを高美濃から銀冠に進展
させているだけにしか見えませんし、▲3五飛と角頭を攻められている時に、却って
離れ駒を作って危険に見えますが、次の▽8ニ飛で藤井システムの恐るべき正体が
明らかになります。先手は▲3六飛から▲4六銀と攻めに出ますが、以下「図4」まで
後手勝勢となります。この玉頭攻撃こそが▽6三金からの秘策だったのです。
もう1つ先手の▲3五歩からの攻めに対する変化を御紹介します。
「図1」から「図5」までの手順
▲3五歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽8三銀 ▲3四歩 ▽2二角
▲3七桂 ▽8二飛 ▲4六歩 ▽8五歩 ▲同 歩 ▽8六歩
▲同 玉 ▽9五歩 ▲同 歩 ▽7五歩 ▲同 歩 ▽9四銀
▲同 歩 ▽8五飛 ▲9七玉 ▽9四香
「図5」
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
| ・ ・v玉v金 ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v銀v角 ・|二
| ・ ・v桂v金v歩 ・ ・v歩v歩|三
|v香 ・ ・v歩 ・v歩 歩 ・ ・|四
| ・v飛 歩 ・ ・ ・ 飛 歩 ・|五
| ・ ・ ・ ・ 歩 歩 ・ ・ ・|六
| 玉 ・ ・ 歩 銀 ・ 桂 ・ 歩|七
| ・ 角 銀 ・ 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 金 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:銀 歩四
手数=52 ▽9四香 まで
先手側には▲3七桂と跳ねて、次に▲4五桂或いは▲4六歩から▲4五歩を狙う手も
有ります。▲4六歩で飛車の横利きを守備に活用しながら、攻めの体制を敷いて行きますが、
▽8五歩 ▲同歩に▽8六歩と打ち捨て、以下「図5」まで後手の勝勢となります。
手順中で▽9五歩、▽7五歩のどちらも、取らないと▽9四銀、▽7四銀と、それぞれ銀を
上がる手が有るので取らざるを得ません。また▽7五歩を▲同飛だと、やはり▽7四銀と
上がる手が有ります。
藤井システムは常に左美濃の▲8七玉を照準に置いて闘うので、3筋攻めに来られても
直接そこには手を掛けず、やはり玉頭から攻める事で結果的に先手の攻めを方向違いで
間に合わない局面にしてしまう事が出来るのです。次章では陽動的な動きで先手が
藤井システムに対抗する手段を御紹介します。