横歩取りは現在のプロ棋界で、名人戦など大舞台で指される流行戦法ですが
それは▽8五飛戦法と言う従来の形に工夫を加えた新戦法です
これから順番に、この▽8五飛戦法までを解説して行きたいと思います
まず一番元になった戦型が 歌手としても有名な内藤国雄九段創案の
”空中戦法”と呼ばれる物です
「図1」までの手順
▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽8四歩 ▲2五歩 ▽8五歩
▲7八金 ▽3二金 ▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽8六歩
▲同 歩 ▽同 飛 ▲3四飛 ▽3三角 ▲3六飛 ▽8四飛
▲2六飛 ▽2二銀 ▲8七歩
「図1」
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v金v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v角 ・v歩|三
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ 角 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二
手数=21 ▲8七歩打 まで
先手が横歩を取った手に▽3三角と上がるのが空中戦法の基本の一手です
次の▲2二角成を防ぐ手としては他に前章までの3戦法のように後手側から
角交換する手や▽3三桂と上がる手などが有りますが この▽3三角が
最も多く指されています
▽3三角に▲3六飛と7六の歩を守り歩得を維持します ▽8四飛に▲2六飛
と回りますが この手で先に▲8七歩を打つと▽2四飛と回られ▲2八歩打と
謝る事になり損です ▲2六飛に▽8六歩と垂らされる手が気になりますが
▲2一飛成 ▽8七歩成 ▲3三角成で先手の勝勢となるので心配有りません
「図1」で次に▲3三角成 ▽同桂 ▲2一角打 ▽4二玉 ▲3二角成
▽同玉 ▲4二金と言う手が有るので これを防ぐ必要が有ります
ここで▽6二銀などとすると この手順で負けとなるので要注意です「図2」
「図2」
後手の持駒:角二 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金 ・ ・ ・ ・v香|一
| ・ ・ ・v銀 ・ 金v玉v銀 ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v桂 ・v歩|三
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|六
| 歩 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二
手数=29 ▲4二金打 まで
「図1」から「図3」までの手順
▽5二玉 ▲5八玉 ▽7二金 ▲3八金 ▽6二銀 ▲4八銀
▽9四歩 ▲9六歩 ▽7四飛 ▲1六歩 ▽1四歩
「図3」
後手の持駒:歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・ ・ ・v桂v香|一
| ・ ・v金v銀v玉 ・v金v銀 ・|二
| ・ ・v歩v歩v歩v歩v角 ・ ・|三
|v歩 ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ ・ ・ 飛 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 歩 歩 ・ ・|七
| ・ 角 金 ・ 玉 銀 金 ・ ・|八
| 香 桂 銀 ・ ・ ・ ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩二
手数=32 ▽1四歩(13) まで
後手は▽5二玉 これで上記の▲3三角成からの筋は▲2一角打の時に
▽3一金と引く手が有って防げます 先手も▲5八玉として互いに隙の無い
陣形を築いて行きます このように中央二段目に玉を据える構えを
”中住まい”(なかずまい)と呼びます 後手の▽7四飛は縦歩取りのように
7六の歩に狙いをつけて先手の動きを牽制した手で 有力な手段です
ここからの闘いは次章で