早石田戦法[1]


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 三間飛車の中の一つの理想形に”石田流三間飛車”と言う戦型が有る事は 9章「図1」の解説で御紹介しました。しかし居飛車側がこれを簡単には実現させてはくれませんので、 石田流本組を見る事は少ないのです。
”石田流”と言う名の由来は、 江戸時代の盲人棋客で石田検校と言う方が創案したと言われている戦法だからです。

 今回は基本的には、この石田流を目指しつつ別の狙いを持った戦法の第一弾”早石田戦法”を見て頂きます。

「図1」までの手順

▲7六歩  ▽3四歩  ▲7五歩  ▽8四歩
▲7八飛  ▽8五歩  ▲4八玉

「図1」


 振り飛車は角交換を避けるのが定跡ですが、この早石田は▲7五歩とかまわず伸ばして行くのが特徴です。 さてこの局面は後手側にいろいろな手が有りそうですが、この隙だらけに見える陣形は本当に大丈夫なのでしょうか。 それでは、これから見て行くとしましょう。

「図1」から「図2」までの手順

▽8六歩  ▲同 歩  ▽同 飛  ▲7四歩
▽同 歩  ▲2二角成 ▽同 銀  ▲9五角
「図2」


 「図1」で、まず見える手は▽8六歩と飛車先の歩を突いて行く手ですが、 ▲同歩 ▽同飛とした瞬間▲7四歩と突き▽同歩なら「図2」まで”目から火が出る王手飛車”となり先手の勝ち。 ▲7四歩を取らなければ▲7三歩成と7筋が破れます。また▽6二銀と守るのは角交換の後、今度は▲7七角打で飛車銀両取りで先手の勝勢です。

「図1」から「図3」までの手順

▽8八角成 ▲同 銀  ▽4五角  ▲7六角
▽3二金  ▲3八玉  ▽6四歩  ▲4六歩
▽7二角  ▲7七銀
「図3」
 「図1」では角交換して▽4五角と打ち、 2七と6七の両成りを狙う手も当然有りそうですが、しかしこれには▲7六角と打つ返し技が有ります。
▽2七角成とするのは、先手も▲4三角成と桂取りで馬を作る手が有り、この角成りは先手に分が有るので▽3二金と防ぎますが、 ▲3八玉で後手の角はどちらにも成れず、以下「図3」まで失敗に終ります。


 と言う事で隙だらけに見えた先手陣でしたが、意外に潰れる事は有りません。 次章では後手が穏やかに進める手に対して、先手の方が激しく動いて行く早石田の骨子となる攻め筋を御紹介します。


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