本章では居飛車側が最も手堅く進めた場合の指し方を御紹介します。 「図1」までの手順 ▲7六歩 ▽3四歩 ▲2六歩 ▽3三角 ▲4八銀 ▽2二飛 ▲6八玉 ▽4二銀 ▲7八玉 ▽6二玉 ▲5六歩 ▽5四歩 ▲5七銀 ▽7二玉 ▲6六歩 ▽8二玉 |
「図1」
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後手の4手目▽3三角に角交換せず▲4八銀とし、▽2二飛と振って来ても飛車先を2六で止めて徹底して後手の急戦を封じます。 ここで▽8八角成と後手から交換しても、その後に急襲する手が有りませんので、普通に駒組みを進めて行く事になります。 先手は角道が開いたままでは玉を固め難いので、▲6六歩として持久戦を目指します。 「図1」から「図2」までの手順 ▲5八金右 ▽9二香 ▲7七角 ▽9一玉 ▲8八玉 ▽8二銀 ▲7八銀 ▽7一金 ▲2五歩 |
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「図2」
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52章で解説した居飛車の左美濃に対し、後手は▽9二香から▽9一玉と更に堅固な”穴熊囲い”を構築して行きます。 この穴熊囲いは玉の守備として最強の物ですが手数が掛かるのが難点です。 しかし先手が後手の4手目▽3三角としての向かい飛車を警戒して守勢に回ったので、囲い完成まで仕掛けられる心配が無くなったのです。 「図2」から「図3」までの手順 ▽5二金 ▲6七金 ▽5三銀 ▲9六歩 ▽6四歩 ▲8六歩 ▽7四歩 ▲8七銀 ▽6三金 ▲7八金 ▽4四銀 ▲3六歩 ▽5五歩 ▲4六歩 ▽5二飛 ▲5五歩 ▽6五歩 ▲同 歩 ▽5五銀 |
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「図3」
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「図3」は途中の手順は違いますが第62期名人戦第1局に現れた局面です。挑戦者の森内竜王・王将が羽生名人・王座に対して、 出だしは別戦型ですが、やはり角道を止めず▽3三角と上がる策を後手番で採用し「図3」から完勝したのです。 通常の振り飛車だと角を攻めに使おうとすれば▽4四歩と止まっている歩を▽4五歩としてからでないと「図3」のような攻撃態勢は作れませんから、 結果として2手早く攻める事が出来るのです。 「図3」では▲5六歩と打っても▽6六歩とされて後手の攻めは止まりません。 ▽6五歩と突き捨ててから▽5五銀とした手筋が重要なポイントです。 この駒組みは一つの例ですが、振り飛車にとって居飛車側の急戦は常に警戒すべき手段なので、 それを封じて尚且つ先手を取って攻勢に出られると言うのは魅力ではないかと思います。 そう言う意味で4手目▽3三角とするこの向かい飛車は、かなり有力な戦法と言えます。 |
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