本章では先後同型早繰り銀が指されなくなった謎を解き明かします
「図1」
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂v銀v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩v歩v歩v歩v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 歩 ・ 歩|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 銀 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角
手数=14 ▽3三銀(22) まで
「図1」は(角換りパターン1)の局面です
「図1」から「図2」までの手順
▲3八銀 ▽7二銀 ▲3六歩 ▽6四歩 ▲3七銀 ▽6三銀
▲1六歩 ▽5四銀 ▲4六銀 ▽4四歩 ▲3五歩 ▽4五歩
「図2」
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・v金 ・ ・|二
|v歩 ・v歩 ・v歩 ・v銀v歩v歩|三
| ・ ・ ・v歩v銀 ・v歩 ・ ・|四
| ・v歩 ・ ・ ・v歩 歩 歩 ・|五
| ・ ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ 歩|六
| 歩 歩 銀 歩 歩 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角
手数=26 ▽4五歩(44) まで
「図2」となって銀を撤退せざるを得ず、先手の早繰り銀は失敗です
棒銀に対しては絶大な威力を誇った早繰り銀も▽6四歩から天敵である
腰掛け銀にされると、うまく行かないのです ▲4六銀に▽4四歩は
”歩越し銀には歩対抗”と呼ばれる 急戦の歩越し銀に対する有力手で
▲3五歩に▽4五歩で銀を撃退する事が出来るのです
そこで▲3六歩の所では▲1六歩と一旦後手の出方を見る手が考えられます
これに後手が▽6四歩なら▲2七銀から棒銀 ▽7四歩なら▲4六歩から
腰掛け銀、そして▽8三銀と棒銀に来れば▲3六歩から早繰り銀と
先に後手側が何で来るのか決めさせて、それに対して有効な策を選ぶ
と言う手待ち戦術です
「図1」から「図3」までの手順
▲3八銀 ▽7二銀 ▲1六歩 ▽9四歩 ▲9六歩 ▽1四歩
▲3六歩 ▽6四歩 ▲3七銀 ▽6三銀 ▲4六銀 ▽5四銀
▲3五歩 ▽4四歩 ▲3四歩 ▽同 銀 ▲2四歩 ▽同 歩
▲同 飛 ▽2三金 ▲2八飛 ▽2四歩
「図3」
後手の持駒:角 歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・v金v玉 ・ ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|二
| ・ ・v歩 ・v歩 ・ ・v金 ・|三
|v歩 ・ ・v歩v銀v歩v銀v歩v歩|四
| ・v歩 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 銀 ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 歩 歩 歩 ・ ・ ・|七
| ・ ・ 金 ・ ・ ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ 玉 金 ・ 桂 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角 歩二
手数=36 ▽2四歩打 まで
▲1六歩には後手側も当然▽9四歩か▽1四歩と端を突いて来る事になるのは
前章まで解説した通りです 結局両方の端歩を突き合った所で先手側から
動いて行くしか無くなりますが▲3六歩に▽6四歩と、やはり腰掛け銀で
迎撃して来ます 「図2」までと一手、違いが有りますが結果は大同小異です
「図3」までとなって後手の形を乱し、ポイントを上げたように見えますが
これ以上攻める手が無く、逆に厚みで押さえ込まれる恐れが有り、この手順も
先手に思わしくありません
したがって手順中▽6四歩に▲3七銀では、先手も▲4六歩として
腰掛け銀を目指す事になるでしょう しかし腰掛け銀にするなら、あまり早く
形を決め過ぎない方が得なので、▲3六歩の所で▲4六歩と指す事になり
早繰り銀にする事が出来なくなってしまうのです
ただ後手側も▲4六歩なら▽6四歩では無く、▽8三銀と棒銀にする手が
考えられます しかし先後の違いが、難解な変化を生む事になりますが
これについては、また後の章で解説します
以上のように、いくら先手が早繰り銀を目指しても後手側に拒否されると
誘導する事が出来ないのです 元々角換りその物が双方の同意が有って
指される戦型なのは3章で述べた通りですが 特に先手側に棒銀が無くなった
時点で後手としては早繰り銀同型にするより、腰掛け銀にする方が有力と
思える為、指される事が無い戦型となったのです
それでは次章より、その角換りの主役、腰掛け銀戦法の解説に入ります