角換りの駒組みを進めて行くうえで重要な常識が一つ有ります
それは俗に”角交換に5筋を突くな”と言われる物で 先手なら▲5六歩
後手の場合は▽5四歩と突いてはいけないと言う事なのです
しかしこれが常識になるには 先人達の長い闘いの歴史が有ったのです
「図1」までの手順
▲2六歩 ▽8四歩 ▲2五歩 ▽8五歩 ▲7八金 ▽3二金
▲2四歩 ▽同 歩 ▲同 飛 ▽2三歩 ▲2六飛 ▽6二銀
▲4八銀 ▽3四歩 ▲7六歩 ▽8六歩 ▲同 歩 ▽同 飛
▲8七歩 ▽8二飛 ▲1六歩 ▽1四歩 ▲9六歩 ▽9四歩
▲5八金 ▽4一玉 ▲6九玉 ▽5四歩 ▲4六歩 ▽5三銀
▲4七銀 ▽5五歩 ▲3六歩 ▽5四銀 ▲6八銀 ▽4二銀
▲3七桂 ▽5二金
「図1」
後手の持駒:歩
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金v銀v金v角 ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・v歩 ・v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v銀 ・v歩 ・v歩|四
| ・ ・ ・ ・v歩 ・ ・ ・ ・|五
| 歩 ・ 歩 ・ ・ 歩 歩 飛 歩|六
| ・ 歩 ・ 歩 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ 角 金 銀 金 ・ ・ ・ ・|八
| 香 桂 ・ 玉 ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩
手数=38 ▽5二金(61) まで
「図1」までの手順を見て これは角換りじゃ無くて相掛りでは無いのか
そう思われた方が多いと思います そうなのです、角交換での常識は元々
この”相掛り新旧対抗型”から端を発しているのです
5筋を突いている後手側が旧型、4筋を突いている先手が新型です
木村義雄実力制初代名人など戦前戦後の名棋士達によって指されていた物で
当時は”相掛りに有らざれば将棋に有らず”と言われ、振り飛車などは
消極的で良い戦法では無いと思われていた時代でした
その頃の居飛車の駒組みには序盤は奇数の歩を突けと言う事と、5五の位置
つまり盤の中央は天王山と言う常識が有ったのです
それ自体は現代でも当てはまる部分が有ります たとえば奇数の歩を突く
と言うのは角と銀の動きを楽にするのが目的ですし 5五の位を取るのは
ゴキゲン中飛車等で有力な作戦なのは解説した通りです
「図2」までの手順
▲7六歩 ▽8四歩 ▲2六歩 ▽3二金 ▲2五歩 ▽8五歩
▲7七角 ▽3四歩 ▲8八銀 ▽7七角成 ▲同 銀 ▽2二銀
▲7八金 ▽3三銀 ▲3八銀 ▽6二銀 ▲4六歩 ▽5四歩
▲4七銀 ▽5三銀 ▲3六歩 ▽5五歩 ▲5八金 ▽5二金
▲1六歩 ▽1四歩 ▲9六歩 ▽9四歩 ▲6八玉 ▽4一玉
▲3七桂 ▽4四歩 ▲6六歩 ▽5四銀
「図2」
後手の持駒:角
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・v飛 ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・ ・v銀v歩 ・|三
|v歩 ・ ・ ・v銀v歩v歩 ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩 ・ ・ 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩 歩 ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:角
手数=34 ▽5四銀(53) まで
「図2」は(角換りパターン1)の手順から上記「図1」の新旧対抗型と
同じく先手が4筋を、後手が5筋を突いて 以下▽5五歩と、天王山である
中央の位を後手が取った局面です
「図2」から「図3」までの手順
▲4五歩 ▽同 歩 ▲3五歩 ▽同 歩 ▲7一角 ▽8四飛
▲3五角成
「図3」
後手の持駒:角 歩二
9 8 7 6 5 4 3 2 1
+---------------------------+
|v香v桂 ・ ・ ・v玉 ・v桂v香|一
| ・ ・ ・ ・v金 ・v金 ・ ・|二
| ・ ・v歩v歩 ・ ・v銀v歩 ・|三
|v歩v飛 ・ ・v銀 ・ ・ ・v歩|四
| ・v歩 ・ ・v歩v歩 馬 歩 ・|五
| 歩 ・ 歩 歩 ・ ・ ・ ・ 歩|六
| ・ 歩 銀 ・ 歩 銀 桂 ・ ・|七
| ・ ・ 金 玉 金 ・ ・ 飛 ・|八
| 香 桂 ・ ・ ・ ・ ・ ・ 香|九
+---------------------------+
先手の持駒:歩
手数=41 ▲3五角成(71) まで
「図3」までは典型的な例ですが 5筋の歩が突かれていると角を打ち込む
隙が出来易いのです 新旧対抗型の相掛り戦でも研究が進むにつれ段々に
旧型の5筋を突く形が不利である事が判明していき 角交換の可能性が有る
戦型では5筋の歩を突かない方が良いと言う結論になったのです